長崎で最もメジャーなダイビングポイントに現れたタイマイ君
昨年末から辰の口ダイバーの間で随分話題になっていたこの子に、遅ればせながら先日僕も会ってきました。
ダイバーにも随分慣れているのか全く逃げるそぶりも見せず、おまけにまだ若い個体ということもあってとても可愛い!僕もすぐに虜になってしまったのですが、岩陰で休んでいたタイマイが海面へと呼吸しに行くときに気づきました。
腹甲(お腹)が随分くぼんでいるなぁ~と。
ウミガメなんてほとんど見る機会ないし、ましてや熱帯域に多いタイマイなので、確かな事はわかりませんが、かなり痩せているように思えます。
水族館時代に飼育していたウミガメ達はお腹まで丸々してた覚えが(彼らは肥満気味なようでしたが)
泳ぐ姿も弱々しく、僕には衰弱しているようにも感じました。
長崎で一番見る機会が多いウミガメはアオウミガメです。
この種は冬の一番寒い時期でも元気に泳ぎまわっており、どうやら低水温にも強い様子。
しかし、タイマイは図鑑の分布からわかる通り、熱帯~亜熱帯に分布する種類です。
例えば沖縄であれば、冬の一番寒い時期でも水温は20℃以下になる事は少ないでしょう。
しかしここは長崎。
今現在で水温は15℃、そしてこれから訪れる最も低い時期には12℃にまで下がります。
(彼女がお気に入りの場所)
これはあくまで僕の予想で外れる可能性も十分にありますが、
このまま何もしなければ、きっとこのタイマイ君は低水温と栄養不足で衰弱死してしまう気がします。
辰の口というポイントには、残念ながらタイマイが好む餌も多いとは言えない環境です。
今の痩せてる状況では、低水温に耐えるだけの脂肪も見についてないように思えます。
(無機質なゴロタばかりが目につく)
さて、これはどうしたものでしょうか。
僕の中では3つ浮かびました。
①現状のまま見守る
僕の考えすぎで、無事に冬を越してくれるかもしれませんし、衰弱死してしまっても、それもまた自然の摂理と言えるのかもしれません。
今回はたまたま運よくダイバーに見える場所にタイマイが現れただけなのですから。
そして死ぬ間際までウミガメと出会えた喜びと興奮をダイバーに与えてくれるでしょう。
②餌付けする
少なくとも、今の痩せている状況から脱してあげるべく、餌を与え栄養状態を改善させます。
運良くいけば、冬を越しダイバーにも慣れ、辰の口というダイビングポイントのアイドルとなり長く愛され続け、長崎のダイビングを盛り上げる存在になるでしょう。
しかし、今の状態でただ餌を与えるだけで冬を越せるのかは甚だ疑問が残ります。
そして餌になるものであれば何でも与えれば良いというわけでもないでしょう。
ウミガメの状態に見合った餌と量、それを定期的に与え続ける必要があるかと思います。
もしダイバー達が野良猫に餌を与えるように各々が好きに与えた場合、保護とはかけ離れた行為となり、結果も実を結ばない気がします。
③水族館で保護する
水族館であれば、水温を適切な温度に保った状態で給仕することも可能です。
もちろん保護した結果死んでしまう事も少なくありませんが、一番タイマイが生存する可能性が高い方法だと思えます。
しかし、それは辰の口というダイビングポイントからウミガメがいなくなる事を意味します。
ただえさえ寒くなる冬の海、辰の口に通うダイバーは皆ウミガメに会える事を楽しみに潜りに訪れるでしょう。もちろん僕もそんなダイバーの1人です。
そんなアイドルとなっているウミガメをダイビングポイントから人為的に取り除いて良いものでしょうか。
(例えばこのカメが僕ぐらいしか潜らない大村湾のポイントに現れたのなら、真っ先に水族館を呼ぶのですが…)
生き物の保護に関して、本当に必要な事なのかどうか、いつも考えさせられます。
何であれば保護して、何であれば自然のままに見届けるべきなのでしょう。
ちなみに、タイマイは絶滅危惧種に指定されています。